京都再エネコンシェルジュインタビュー
株式会社 Hibana / 京都ペレット町家ヒノコ(京都市中京区)の京都再エネコンシェルジュ・松田直子さんとスタッフの仲山陽奈さんにお話をお伺いしました。
- 株式会社 Hibana / 京都ペレット町家ヒノコ
- 京都再エネコンシェルジュ:松田直子さん(1名)
- 再エネ分野:薪・ペレット
京都から日本の森を元気に!
京都市役所近く、寺町通り沿いの町屋の店舗に、株式会社 Hibanaが運営する「京都ペレット町家ヒノコ」があります。中に入ると木で囲まれた落ち着く空間で、奥はペレットストーブで温められていました。京都再エネコンシェルジュである代表取締役の松田直子さんが、事業を始めたのは、2006年5月。元々環境に興味が強く、熱帯林破壊の問題にかかわるうちに「なぜ日本の木は使われず、外国産の木材を輸入するのか?」との疑問から「日本の木を使おう!」と活動を開始されました。「当時から地元の木で家を作ろう!という活動はあったのですが、エネルギーの視点・薪炭林の視点を持った活動はありませんでした。家は一生に一度の買い物ですが、エネルギーは日々使うものです。そこで、木質バイオマスの利用を進めることを中心に、国産の木にこだわり、日本の森の現状を知ってもらいたいと森のことをいろいろな視点から発信することを始めました。」設立時には自社で薪も作って販売されていたとのこと。目指すのは「薪炭革命。木を使うことで間接的に日本の森を元気にしたいんです。」と松田さんは語ります。
ペレットストーブ屋さん?
京都ペレット町家ヒノコを開店したのは2010年。「当時はお店にペレットストーブを何台も並べて、周りからはペレットストーブ屋さんと思われていました。一番多いときは10台もありましたからね。本当は、薪やペレットや炭を売る燃料屋なんですけど。あの頃は木質バイオマスを普及したいと尖っていたんだと思います。それでもペレットストーブはなかなか広まらないんです。薪ストーブは、趣味で広がる要素や、冬に震災にあわれた方が、電気が無くても利用できるので震災後に導入するなどで広まる要素があるのですが、ペレットストーブは認知度は低く、ほぼ知られていない。建築関係の人でも、名前は知っているくらいで、中身を知らない人も多いんです。薪ストーブの薪の代わりにペレットを燃料にしていると思っている人もいるくらいです。本当は、燃料も自動で供給されて、ファンが回って完全燃焼して、温風が出てくる灯油ファンヒーターに近い仕組みなんですけどね。(ちなみに法律上はFFの灯油ストーブ扱いです。)だから、ペレットストーブをお店に来て初めて知った人は多いですよ。まずは知ってもらわないと入り口も何もないですよね。
子どもが生まれてからは、まずは木への興味の入り口を少しでも広げたいと思うようになって、お店でも木のおもちゃや木の小物を多く取り扱うようになりました。木のおもちゃは、落ち着くし、安心できて手触りがいい。一般的には木のおもちゃは値段が高く、おもちゃ屋などでも売り場もとても小さいく、購入にはハードルはあるのですが、おもちゃを使ってもらうことで「木っていいな」と思ってもらって、そこからつなげていきたいと思うようになったんです。木の魅力でいうと他にも、ショッピングセンターで働いていた経験のあるスタッフが『ショッピングセンターとこの木で囲まれた町家では空間の力の強さが違いますね。働く環境が木に囲まれているのは良いですね。』と実感したことを語っていました。」とのこと。木に親しんで、森を知って、木を使うようになる。今は入り口を広げることに力を入れておられます。
課題を乗り越えペレットストーブを普及させていきたい
数年前、ペレットストーブ購入者に対して、アンケートやヒアリングを実施し、普及への課題を調査された結果から課題が分かってきたそうです。その課題や現状などを聞きました。「ペレットストーブには、火が見えて暖かいといったメリットだけでなく、掃除や初期投資の高さ、燃料調達が容易でないことなどデメリットもあります。しかし、燃料調達に関して、京都市では「ペレット宅配サービス」が整備されており、格安での宅配が利用できます。このサービスを利用すれば、病気の時でも、車が無くても、高齢者でも、ペレットを入手することができるのです。これはとても恵まれた環境であり、政令指定市の中でも「ペレット宅配サービス」が整備されている地域はとても珍しいんです。また、身近な地域の間伐材を利用したペレットは、使用することで日本の山が元気になることに繋がります。私たちの価値の置き方次第で、ペレットや薪もそう高くは感じないはずです。
後の課題はアフターメンテナンスの体制の整備ですね。薪ストーブと違って、ペレットストーブは歴史も短く、まだまだアフターメンテナンスの体制が十分でないと感じています。故障した場合、もちろん、京都で十分に対応していただけるメーカーもありますが、販売店が事業をやめていたりすると直接メーカーから技術者に来てもらうケースもあり、そのメーカーが遠いと出張費がとても高くつくんです。そこで今後は安心して修理も頼めるように、電気屋さんと組んでアフターメンテナンスをお願いできる仕組みを作ったり、販売店向けの定期的な研修会や、販売店同士で助け合う会などのつながりが必要だと感じています。」と松田さんは言います。
また、スタッフの仲山さんからは、「将来、灯油の巡回販売のように、ペレットの巡回販売がされる時代が来るぐらいペレットストーブが普及してくれたらいいですね。私が子どもの頃、資源のない国の日本と学んだのですが、森林は豊かな資源だと知りました。もちろん取りすぎたらはげ山になってしまうので、適正利用をして、荒れている森に人の手が入って、豊かな森が取り戻せるようになるとよいと思います。」と思いを語ってくれました。
日本の豊かな資源である森林。その豊かな森林を維持するためにも、森に手を入れていく必要があり、森を活用し、有効利用することのできるペレットの生産。そしてそれを使用するペレットストーブの活用は、日本の森を元気にすることに繋がり、そして何より暖かくぬくもりのある火のあるカーボンニュートラルな生活を気持ちよく過ごすことに繋がります。「薪炭革命」へ向けて一歩ずつ課題を乗り越え、より一層の普及へ向けて様々な入り口を用意して進んでおられました。
(取材:2020年12月18日)