京都再エネコンシェルジュインタビュー
京都ストーブ販売(綾部市於与岐町)の京都再エネコンシェルジュ・山本大輔さんにお話をお伺いしました。
最高の一台を追求する「店舗を持たない薪ストーブ屋」
綾部市で店舗をあえて持たず、薪ストーブの販売とメンテナンスを手掛ける京都ストーブ販売の山本大輔さんに電話でお話をお伺いしました。
黄色い作業着を着ているのが山本大輔さん
京都ストーブ販売の強みは、「あらゆるメーカーのあらゆる薪ストーブでメンテナンスができること」と山本さん。「年間200日ほど現場に出て常に薪ストーブと接しています。全て同じに見える薪ストーブですが、生産国やメーカーあるいは薪ストーブを構成している素材、構造など一つとして同じものはありません、それぞれの薪ストーブに適した樹種や操作方法などに精通し、お客様の薪ストーブライフを確かなものに出来るかどうか?それがメンテナンスのプロである私の存在価値だと思います。」と仕事への思いを語っておられました。
「残念なことですが、薪ストーブを販売しただけでアフターフォローをほとんどしていない販売店もあります。一生使えると宣伝していながら、肝心のメンテナンスについてはお客様に驚くほど情報が伝わっていないケースも多くあります。直火を扱う薪ストーブは本質的に『とても危険な道具』ですので、そのような現状を少しでも改善したいと思い、実店舗を設けずに屋号にも『メンテナンス』の文言をわざわざ入れて、薪ストーブの事業をスタートさせました。店舗がないのでショールームがありません。お客様の薪ストーブの前、ほんの一畳ほどの空間が私にとっての職場です。特定のメーカーを推奨するのではなく、お客様の好みや使用方法、入手出来る薪の種類などを総合的に判断して、最も満足度の高いものを選び抜き提案させていただいています。万人に当てはまる最高の 1 台は存在しません。趣味や嗜好、人生観、向き不向きなどでもおすすめすべき 1 台が変わってしまう、そこが薪ストーブの奥が深くて難しいところですね。」
○きっかけは里山の古民家への定住から
「以前は長岡京市に住まいがあり、服飾関係の仕事に就いていました。仕事でたびたび訪れていた地方の里山の景色に思いが募り、とうとう35歳の時に現在の場所(綾部)に定住しました。典型的な古民家ですので隙間風も多く、冬の寒さは想像を絶するほどでしたね(笑)その古民家に最も相応しい究極の暖房手段として選んだのが薪ストーブでした。そのきっかけもあり、転職した先の建設会社で薪ストーブ事業をスタートさせる事になりました。以降は「建築&薪ストーブ販売」を 8年、さらに「薪の製造販売」を 2 年半と薪ストーブにかかわる仕事をずっと続けてきました。」
○薪の質が重要
「薪ストーブによるトラブルで最も多いのは煙による近隣住民からのクレームです。正しく製造管理された薪は1年~1年半以上の乾燥期間を設けて含水率16%~20%未満まで水分量を落とすのですが、前述したクレームのケースでは乾燥が悪い薪を焚いた為に大量に煙が発生しました。
薪を専門に販売している事業者も、そのレベルは千差万別です。製造から販売まで、乾燥期間を含め1年以上を要する薪の製造&販売の仕事は、資金繰りを考えると正直かなりキツイ仕事だと思います。少しでも安く手にいれたいお客さんと、早く売りたい業者さんの利害が悪いところで嚙み合ってしまうと煙によるトラブルを引き起こす可能性が高くなります。京都ストーブ販売でも薪を販売していますが、喉から手が出るほど売りたい時でもぐっとがまんして、乾燥したものだけを販売するようにしています。重要なのは薪なのです。薪ストーブが燃えているのではなく、薪が燃えているのですから。」
○薪ストーブの魅力は「確かさ」と五感を総動員した暮らしにあり
薪ストーブの魅力は?と質問すると、「『確かさ』が一番。災害時にライフラインを自分で何とか出来ます。炎があればなんとかなります。」と即答されました。「木・薪は身近にあるものです。太陽光発電などと比べると原始的なエネルギーだと思います。たった数十年前の日本の暮らしにも薪は多くあったはずです。今は山と人が遠くなってしまいました。より薪が使われるように出口が確保されれば、森林整備がそれに引っ張られて進んでいき、森が近く感じられると思います。森に囲まれた場所では自分で薪を用意できて、水が流れていれば、生きていく上で欠かせない水と熱を自前で用意することができるので、これはとても心強いことです。災害に左右されない「確かさ」があるんです。そして、薪ストーブ生活には五感が全部あります。目に見える炎。薪のはぜる音。直接感じる暖かさ。そして料理もできるので、においと味覚。本能総動員の暮らしができるのです。私にとって薪ストーブは奥が深く果てしなく楽しめるツールなんです。」
○田舎だからこそ熱を薪で地産地消
「地域にあるもので熱を引き出す地産地消が大切だと思っています。それは都会ではなく田舎だからこそ、周りに森林資源があり、コストが下がって現実的になるんだと思います。電気を自分たちで作り出せる時代です。熱も同様に地域で、自分の家で、薪ストーブで作り出すことができるんです。」と薪ストーブの魅力を存分に語っていただきました。
(取材:2021年3月4日電話にて 写真提供:京都ストーブ販売)